丘の上に月が昇る・続

◆イタリアSF友の会◆

Le avventure di Lupo Uragano

Le avventure di Lupo Uragano

(ルーポ・ウラガーノの冒険)

Pinin Carpi著

Piemme Junior, 2004

船乗りルーポ・ウラガーノの船は奇妙だ。マストの代わりに巨大な栗の木が三本。船には草地、池もあり、もちろん彼の住む小さな家も。小さな森みたいな船に乗って、料理人の女性や、二頭の子グマ、アザラシ、猿、カモなどの動物の友達といっしょに大海原を旅するルーポ。そんな変な船だけでわくわくするのだけれど、彼が行くのはおかしな場所、出会うのはおかしな人ばかり。で、おかしな事件が巻き起こる。そんな5編のルーポの奇想天外な冒険集。

馬鹿馬鹿しいほどの奇妙な空想譚は大好き。旗信号を誤解する海賊たち、空中で作る巨大フリッタータ、狂った絵描きの町、珍妙な発明家の村、海底の町と、ルーポは冒険するのだけれど、一番好きなのは発明家の村の話。村には何人も発明家がいるけれど、皆、基本的な常識が完全に欠落していて、家には屋根も窓もドアもなく、家具は外に出しっぱなし。なのに家具が雨で濡れないようは発明を作っていたり。「どうして屋根がないのか?」とルーポがつっこむと、初めてそれに気がついてルーポを称賛したり。

ちなみに、lupoは狼、uraganoはハリケーンという意味。ルーポ・ウラガーノとはウルフ・ハリケーンといった感じか。